12 木立の中に建つ一体の屋根で結ばれた礼拝堂と木造住宅

長野県軽井沢町に計画した個人用礼拝堂と住宅です。
敷地は別荘がゆったりとならぶ閑静な地区にあります。建主はここに週末住居と海外の工房に製作を依頼した特別なパイプオルガンを設置する個人用の礼拝堂を作ることを希望していました。

一つの屋根でつながれたRC造の礼拝堂と木造の住宅

建物は清廉でくっきりとしたシルエットで木立の中から現れます。
中央の通り抜け可能な通路を境に、一方は少し地面を掘り込むことで気積を確保した鉄筋コンクリート(RC)造の礼拝堂、もう一方を木造二階建て住宅として計画しました。このふたつが一つの屋根でつながれます。

霧の木立の中から静かにうかびあがる建築

それぞれの目的に適切な空間ボリュームを確保しながら、その姿全体が一体のものとして、静かに木立の中に建っている。そしてこの建築が軽井沢独特の霧の中から静かにうかびあがってくる、そんな建築を目指しました。



木立の中に建つ一体の屋根で結ばれた礼拝堂と木造住宅 配置計画
木立の中に建つ一体の屋根で結ばれた礼拝堂と木造住宅 礼拝堂内観イメージ
木立の中に建つ一体の屋根で結ばれた礼拝堂と木造住宅 住宅部分内観イメージ
木立の中に建つ一体の屋根で結ばれた礼拝堂と木造住宅 平面計画
木立の中に建つ一体の屋根で結ばれた礼拝堂と木造住宅 断面計画
木立の中に建つ一体の屋根で結ばれた礼拝堂と木造住宅 立面計画
中央のポーチを境に、一方が礼拝堂、もう一方が住宅です。

パイプオルガンを設置する礼拝堂へは階段を少し下がっておりて行きます。
パイプオルガンにとって、それが置かれる空間の響きの長さはとても重要な要素です。響きの長さは、空間の気積(大きさ)とそのプロポーション、そして壁などの仕上の密度に大きく影響されます。いうならば空間そのものが音色や響きを左右する楽器となるというわけです。これに加え、周囲に音が漏れないように遮音性にも留意する必要があります。また地上からの高さを抑えるべき敷地条件であったので、床面を地面から下げることにしました。これらの理由により、礼拝堂部分の構造は鉄筋コンクリート(RC)造として計画します。自然光は左右正面背面のそれぞれに設けられた開口部から採り入れます。長方形の空間ボリュームの中に光の生気が吹き込まれます。

住宅部分は木造二階建てです。
一階には寝室・ゲストルーム・水周りを配置します。一階から二階への階段は、これらのプライベートな空間とは切り離されています。二階は屋根の構造が現しになった一室空間です。その中にキッチンを納めたブースをつくります。ゲストを多く招いた会食などでも使うことができる広々とした空間です。キッチンブースと構造体である柱と周囲の林を室内に招き入れる特徴的な窓によって、一室空間全体が生き生きとした動きの中に息づきます。