福島県いわき市に計画した二階建ての木造住宅です。
昔からの住宅がならび、ご近所のコミュニティーもしっかり残る地域での計画です。敷地は両親が住む敷地を分筆した土地。地域に住むということ、そこでの家づくりとはどのようにあるべきなのかなどについて考え、それを実践できる家が求められていました。
両親の家と母屋と離れで囲まれた共有の菜園
両親の家に隣接して新しい家を計画します。新しい家は母屋と離れのようにしてつくる和室のふたつで構成します。両親の家と母屋と離れで囲まれたところに共有の菜園をつくります。
通りに面した飾り窓、菜園に面した縁側、地域の人とのつながり
離れとした和室の通りに面した部分に花や茶器などを飾る小さな窓をつくります。また離れの菜園側には縁側をつくり、近所の人や両親やこの家の家族がなんとなく座っておしゃべりができる場所をつくります。
菜園、とおりにわ、作業場がつなぐ暮らし
母屋は二階建て。一階にはぐるっと回れるプランのLDKと、通りに面したスタディーコーナーをつくります。キッチンの奥に洗面室を配置。洗面室から菜園前につくったとおりにわと作業場に直接出ることができるようにします。
隣接して建つご両親の家と新しい家とを、昔からある暮らしと新しい暮らしとを、そして地域の人々の暮らしを、この住宅が適切な距離感でつなぎ、また継承し育んでいく、そんな計画です。
新しい家は二つの棟で構成しました。
一方は総二階の建物で、一階にリビング・ダイニング・キッチンとライブラリーと呼ぶ家族皆でつかう勉強コーナー、洗面室・浴室などを配し、二階には寝室を設けています。また一階ライブラリーの上部は吹抜けとしました。もう一方の建物は離れのような平屋建ての和室になっています。
両親の家と新しい家とを、その間に設けた菜園がつなぎます。
畑で野菜などを育てること、それを洗ったり調理したりできる場所をつくること、そして皆で眺めて楽しむ場所をつくることで、二つの家が具体的なつながりを持ち、またそれらをとおして、お互いの家を気遣うことができます。
新しい家の一階は大きなワンルームの中にカウンター型のキッチン、両親も含めて座れる大きな丸テーブル、そして上に吹きぬけたライブラリーが配されています。一階全体がぐるっと回れるプランです。菜園に面したとおり庭側は全面開口とし、その反対側壁面はすべて収納にしています。ライブラリーには吹抜け天井一杯までの本棚になっています。その下に長いカウンター式の机を設置します。
離れのような和室は小さな茶室。表通りに面した小窓は、道行く人へのショーケースになり、季節の草花や置物などが目を楽しませます。菜園側には縁側を設け、近所の人も皆で腰掛けて和みます。
外壁は、二階建ての部分は板張り、平屋での部分は塗り壁として計画しました。
幾つもの建物が寄り集まったような雰囲気によって、この地域の風景や暮らしの中に溶け込み、またそれらを継承し育てていく、そんなことがこの新しい家の計画から始まります。