07 鈍い光沢を放つ金属板のなかに雲のような広がりを持つ家

鈍い光沢を放つ金属板のなかに雲のような広がりを持つ家
東京都港区の閑静な住宅街の一角に計画した鉄筋コンクリート(RC)造の三階建て住宅です。
住まいやビルトインガレージのほか、職住近接住居として仕事部屋やAVルームなどが求められています。

シルバーグレーの鈍い光沢で覆われた直方体

単純な輪郭を持つ直方体の形状がシルバーグレーの鈍い光沢を持つ金属板で覆われます。その表面は、周囲の風景をかすかに映しこみながら、時の移ろいのなかで存在感を増して行きます。

三層構成の建物を階段・EV・光と風の吹抜がつなぐ

建物は三層構成とし、一階にビルトインガレージ・仕事部屋・AVルーム・客間を配置します。二階には主寝室・子供室・洗面室や浴室・納戸を配置します。三階にはワンルームのリビング・ダイニング・キッチンとパティオ、バルコニーを設けます。これらを階段・EV・光と風の吹抜がつなぎます。

トラバーチン、白い天井、木目の壁面収納、白く輝くカーテン、雲のような広がり

三階は、雲のような広がりを持つ リビング・ダイニングスペースになります。トラバーチン(大理石)の床、白い天井、床から浮かび上がった木目の美しい壁面収納、光によって様々な表情を魅せる白く輝くカーテン。穏やかな風と美しい光に満ちた住まいです。



鈍い光沢を放つ金属板のなかに雲のような広がりを持つ家 平面計画1階
鈍い光沢を放つ金属板のなかに雲のような広がりを持つ家 平面計画2階
鈍い光沢を放つ金属板のなかに雲のような広がりを持つ家 平面計画3階
<配置計画>
私たちは、建物をひとつのシンプルな直方体の塊として、敷地に配置します。これにより、この敷地における最大限の大きさを持つシンプルな形状の床面を確保することが可能となります。

<明確にゾーニングされた3層の空間>
私たちは、シンプルな直方体の塊の内部を、それぞれ明確に性格が違う3層の空間により構成します。
一階:駐車スペース、アプローチ、玄関、仕事部屋、AVルーム、和室等。
二階:主寝室、子供室、洗面脱衣室・浴室、トイレ、納戸。
三階:リビング・ダイニングルーム、キッチン、家事室。最大限の大きさを確保するワンルーム。

<3つのゾーンを貫き、また結びつけるもの>
私たちは、これらの3層のゾーンを縦方向に貫き、また結びつけるものとして、3つの要素を設置します。
EV:3つのゾーンを直接的に接続するもの。
階段:上ったり下りたりするという身体的な移動感覚によって3つのゾーンを結びつけるもの。
光と風の吹抜:3つのゾーンを光と風、気配によってつなぐもの。

<構造と断熱>
私たちは、鉄筋コンクリート造(RC造)として建設することを計画します。これにより、建物自体が耐火構造となり、この敷地(準防火地域)において、耐火被覆等が不要となると同時に遮音性に優れたものとなります。

鈍い光沢を放つ金属板のなかに雲のような広がりを持つ家 3階内部空間のイメージ
<三階の雲のような広がりを持つ リビング・ダイニングスペース コンセプトイメージ>
北側の窓からの静かで安定した光。
正面には長さ13.6mの壁面収納がリビングスペースまで続く。
床はすべてトラバーチンで仕上げられる。
奥行13.6mの長さを持つリビング・ダイニングスペース。
中央にはグレーの硬質な砂岩で仕上げられたEVが位置する。
南側の窓からは半透明のカーテンをとおして都市の風景を感じることができる。
リビングスペースから連続するパティオからは空を望むことができる。

鈍い光沢を放つ金属板のなかに雲のような広がりを持つ家 立面計画
鈍い光沢を放つ金属板のなかに雲のような広がりを持つ家 3階内部空間のイメージ 断面計画
<外断熱の採用と外壁内の通気の確保>
私たちは、RC躯体という熱容量の大きい素材の特質を生かすため、その外側に断熱層を設けそれを外皮で覆いながら、外壁内通気を確保する方式(外断熱通気工法)を計画します。 これにより、室内における外気温の変化の影響をできるだけ少なくし、各季節をとおしてすごしやすい室内環境をつくりだします。
例えば、冬は床暖房を基本的に全館導入することが設計条件にあるので、それが有効に活用されます。床暖房によって暖められた室内は、その熱をRCの躯体内にとどめ、断熱層によってそれが外部に放出されるのを防ぎます。一方夏は、エアコン等によって適温にされた室内の気温をその躯体内に保ち、外部からの日射によって暖められた空気は、断熱層と外皮のあいだの通気層から排出されます。
このような仕組みで、冬季においても夏季においても、室温が快適に保たれるのです。
開口部(窓など)においては気密性・断熱性を確保した上で、必要に応じて風を取り入れ・通り抜けさせて、心地よい室内環境を計画します。

<外装>
私たちは、外壁の仕上げ材料として、表面処理亜鉛合金板「サビナシルーフ」を外壁に使用します。
RC造による躯体が骨格であり、同時に快適な室内環境をつくりだすための肉であると考えるならば、外装はその皮膚です。私たちはこの部分をシルバーグレーの落ち着いた色合いを 持ち、かつ気品のある美しさをもつ「サビナシルーフ」によって覆います。この外装材は、時間の経過と共に色合いが深みを増していき、落ち着いた表情と風格を増してゆきます。この素材は元来、耐久性に優れ、またメンテナンスも不要で、耐候性が高いものとしてヨーロッパなどで、広く屋根材として用いられてきたものです。